令和6年8月に勧告された”本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み”により、人事院は国会及び内閣に対し給与引き上げの勧告を行いました。それにより、2024年度国家公務員の給与とボーナスの支給額がアップします。この給与勧告は民間給与の状況を反映して、なんと約30年ぶりの高水準ベースアップとなります。詳しいベースアップの概要は後述いたしますが、公務員の方々にとっては非常に嬉しい報告となりました。
この人事院勧告による給与の引き上げは、国家公務員の給与規定に準拠している国立大学職員、並びに私立大学職員も同様に給与引き上げを意味します。一部の大学職員にとっても嬉しい話題だったのではないでしょうか。
かくいう筆者も現在大学職員として勤務しており、給与体系は国家公務員に準拠しています。そのため、毎年8月の人事院勧告・報告で俸給(基本給)とボーナス支給額が変わります。そんな人事院勧告の2024年度給与・ボーナス事情について調査してみました。
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2024年の給与、ボーナスはどれくらいアップするのか
令和6年8月 ”本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み”より、以下の情報が掲載されております。
月例給
官民較差※ :11,183円(2.76%)を用いて引上げ改定
【内訳:俸給 9,836円 寒冷地手当 80円 はね返り分(※) 1,267円】
※官民較差とは、簡単にいうと民間の給与と公務員の給与を役職や年齢を対比させ、どの程度差があるかを比較したもの
採用市場での競争力向上のため、初任給を大幅に引上げ 給与制度のアップデートの先行実施
【総合職(大卒)】 230,000円(+14.6%[+29,300円])
【一般職(大卒)】 220,000円(+12.1%[+23,800円])
【一般職(高卒)】 188,000円(+12.8%[+21,400円])
ボーナス
年間 4.50 月分 → 4.60 月分 期末手当及び勤勉手当の支給月数をともに0.05月分(計0.10月分)引上げ
という結果となっております。月例給の棒給月額の引き上げについては公務員以外の方はピンとこない方も多いのではないかと思いますが、新卒初任給が大幅に上昇しているのがわかります。物価高の現状において、若手のモチベーションが上がる大きな改定になったと思います。
ボーナスは0.10ヶ月アップという分かりやすい結果となっています。ざっくりインターネットで調べた感覚値ですが、年間ボーナス4.6ヶ月分は世間一般の水準から見ても結構多いなと感じます。公務員のボーナスはやっぱり安定していますね。
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公務員給与に準拠した大学は毎年8月の人事院勧告を要チェック
人事院の基本的な考え方として
”人材の確保への対応”、
”組織パフォーマンスの向上”、
”ワークスタイルやライフスタイルの多様化への対応”
という3点の課題を掲げています。
上記3点の中身より、民間の動向による人材確保のための競争力ある給与水準を維持、能力・実績をより適切に反映した昇給・ボーナスの決定などが、今回の給与引き上げに結びついていると考えられます。
…正直、公務員は際立って仕事が出来なくても長く勤めていればそれなりの給与がもらえるので、本当に能力や実績を適切に反映した給与体制に変化するのかは疑問がありますが(´・ω・`)
前述しましたが、公務員の給与が関係する人事院勧告・報告は毎年8月に発表があります。公務員の夏ボーナスは6月30日ですので、夏ボーナス支給後に人事院勧告でその年度の給与とボーナスが調整されてしまいます。そのため、6月に支給済みのボーナスの増減額分は12月の冬ボーナスで調整されるため、12月の給与・ボーナスは遡及が行われてかなり手取りが多くなることが予想されます。一部の方は年末調整で払いすぎた税金も返ってくるため、その分も含めるとかなりお財布が潤うのではないでしょうか。
国家公務員給与規定に準拠している大学の教職員の方は、毎年8月の人事院勧告をチェックしておくと良いと思います。
大学職員の給与はなぜ国家公務員に準拠しているのか
これは以前に別記事でもお伝えしておりますが、国立大学職員は”みなし公務員”などと呼ばれています。国家公務員に準拠している一部の私立大学職員も同様にみなし公務員と呼ぶところもあるようです。
こう呼ばれているのには、もともと国立大学職員は国家公務員だったことが背景にあります。
国立大学は平成16年に法人化しており、それに伴って国立大学職員は国家公務員ではなくなりました。しかし大学経営は非常に公益性の高い事業であり、法人化した後も国からのバックアップ(補助金等)が継続しています。その為、国家公務員としての給与体系や福利厚生制度を現在も継続しており、国の基準に準拠している”みなし公務員”という言葉を使うようになったそうです。
国立大学と一部の私立大学はこのような”みなし公務員”としての規定を今も継続しているため、人事院勧告による給与体系の変更は多くの大学に影響を与えていることが考えられます。
大学は国家公務員の給与規定を準拠し続けるのか否か
国家公務員の給与は非常に安定しています。一般企業とは異なり、情勢が多少変わったとてボーナスの金額が極端に上下することはありません。
大学職員の情勢はどうでしょうか。18歳人口の減少を受け、定員割れが起きている大学も増えてきました。一般企業同様に、学納金収入という名の収益を上げないとあっという間に事業収支差額がマイナスに転じます。にも関わらず安定したボーナスを維持する国家公務員の給与規定に準拠したままで良いのでしょうか。
いずれは大学独自の給与規定に切り替わるのではないでしょうか。
学納金(学生)を集められない大学の職員と教員に高い給与を支払っていてはいずれ潰れてしまいます。大学はネームバリューさえあれば自然と学生が集まって学納金を納めてくれていましたが、今は少し違うと思います。学生の母数がそもそも減少しているので、他大学との競争に負けてしまえば学生を根こそぎ奪われてしまう時代になってしまっているのです。
ようやく一般企業と同様に、収支を意識した経営戦略が必要になったと実感しています。
この危機的状況、危機感を認識している大学職員・教員がどれだけいるかはその大学次第ですが、今後の大学経営には大きな改革が求められていると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。単純に国家公務員の給与・ボーナスが引き上げられることは、みなし公務員として勤務している大学職員にとっても嬉しいニュースだったと思います。
ですが、学生数が減り続ける一方で、高い給与を維持し続けるということには限界があると考えられます。給与が上がるのであれば、収入も比例して増やさなければ経営を圧迫します。大学は今、改革と変革を求められています。
大学職員は何もしなくても学費収入が安定している
大学職員の仕事はラク
大学職員の給与は何もしなくても右肩上がり
そう考えて転職活動しようとお考えの方は今すぐ考えを改めないと、大学職員に転職したとしてもまた転職する羽目になるかもしれません。
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