令和5年8月7日の人事院勧告・報告により、人事院は国会及び内閣に対し給与引き上げの勧告を行いました。それにより、2023年度国家公務員の月例給とボーナスの支給額がアップすることとなります。新型コロナウイルスの終息に向かい民間における大幅な賃上げが反映されたことで月例給は、過去5年の平均と比べ約10倍のベースアップとなるようです。公務員の方には嬉しい情報ですね。
この人事院勧告による給与の引き上げは、国家公務員の給与規定に準拠している国立大学職員、並びに私立大学職員も同様に給与引き上げを意味します。今回のニュースは公務員だけではなく、一部の大学職員にとっても嬉しい話題だったのではないでしょうか。
かくいう筆者も現在大学職員として勤務しており、給与体系は国家公務員に準拠しているため、毎年8月の人事院勧告・報告で俸給(基本給)とボーナス支給額が変わります。そんな人事院勧告の2023年度給与・ボーナス事情について調査してみました。
※2023年12月8日に予定通り本学のボーナスが支給されましたので記事にしました!!
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2023年の月例給、冬ボーナスはどれくらいアップするのか
令和5年8月の人事院による給与に関する勧告・報告により、以下の情報が掲載されております。
月例給
初任給を始め若年層に重点を置いて俸給表を引上げ改定
【平均改定率】1級[係員] 5.2%、2級[主任等] 2.8% 等
※勧告後の平均給与(行政職俸給表(一)) 月額 407,884円(+3,869円、+0.96%)、年間給与 6,731,000円(+105,000円、+1.6%)
ボーナス
年間 4.40 月分 → 4.50 月分 期末手当及び勤勉手当の支給月数をともに0.05月分(計0.10月分)引上げ
在宅勤務等手当 【新設♪】
住居その他これに準ずる場所で、一定期間以上継続して1箇月当たり10日を超えて正規の勤務時間の全部を勤務することを命ぜられた職員について、光熱・水道費等の負担軽減のため、月額3,000円を支給(受給者に係る通勤手当の取扱いを併せて措置)
という結果となっております。月例給の棒給月額の引き上げについては公務員以外の方はピンとこない方も多いのではないかと思いますが、ボーナスは0.10ヶ月アップという分かりやすい結果となっています。年間ボーナス4.5ヶ月分は世間一般のボーナス水準から見ても結構多いなと感じました。公務員のボーナスはやっぱり安定しています。
在宅勤務手当なるものが新設されていますが、報告の中に多様なワークスタイル・ライフスタイルを可能とする取組を掲げていましたので、リモートワークの普及に影響して新設されたものと思われます。
かくいう筆者が勤務している大学も、今回の人事院勧告決定に引き続き準拠するのであれば冬ボーナスで15,000円くらいアップ(概算)しそうです。
公務員給与に準拠した大学は毎年8月の人事院勧告を要チェック
人事院の基本的な考え方として”職員個々の成長を通じた 組織パフォーマンスの 向上施策”というものがあります。その中にある職員の役割・貢献に応じた処遇等の実現という項目が今回の給与引き上げに結びついています。
職員の役割・貢献に応じた処遇等の実現
役割や能力・実績等をより反映し、貢献にふさわしい処遇を実現
✔ 係長級~本府省課長補佐級の俸給の最低水準を引上げ
✔ 本府省課室長級の俸給体系をより職責重視に見直し
✔ 管理職員の超過勤務に対する手当支給拡大
✔ 最優秀者のボーナスの上限引上げ
公務員の給与が関係する人事院勧告・報告は毎年8月に人事院勧告が発表されます。公務員の夏ボーナスは6月30日ですので、夏ボーナス支給後に人事院勧告でその年度の給与とボーナスが調整されてしまいます。そのため、6月に支給済みのボーナスの増減額分は12月の冬ボーナスで調整されることになります。
※筆者の大学だけでしたらすみません^^;
ので国家公務員給与規定に準拠している大学の教職員の方は、毎年8月の人事院勧告をチェックしておくと良いと思います。
大学職員の給与はなぜ国家公務員に準拠しているのか
これは別記事でもお伝えしておりますが、国立大学職員は”みなし公務員”などと呼ばれています。国家公務員に準拠している一部の私立大学職員も同様にみなし公務員と呼ぶところもあるようです。
こう呼ばれているのには、もともと国立大学職員は国家公務員だったことが背景にあります。
国立大学は平成16年に法人化しており、それに伴って国家公務員ではなくなりました。しかし大学経営は非常に公益性の高い事業であり、法人化した後も国からのバックアップ(補助金等)が継続しています。その為、国家公務員ではなくなったものの、国家公務員として現在も給与体系や福利厚生制度を継続しており、国の基準に準拠している”みなし公務員”という言葉を使うようになったそうです。
一部の私立大学もこのようなみなし公務員として待遇を決定しており、人事院勧告による給与体系の変更は多くの大学に今も大きく影響を与えています。
大学は国家公務員の給与規定を準拠し続けるのか否か
国家公務員の給与は非常に安定しています。一般企業とは異なり、情勢が多少傾いたとしてもボーナスの金額が極端に下がることはありません。
大学職員の情勢はどうでしょうか。18歳人口の減少を受け、定員割れが起きている大学も少なくありません。一般企業同様に、学費という名の収益を上げないとあっという間に事業収支差額がマイナスに転じます。にも関わらず安定したボーナスを維持する国家公務員の給与規定に準拠したままで良いのでしょうか。
筆者はいずれ大学独自の給与規定に切り替わると考えています。
学費(学生)を集められない大学の職員、教員に国家公務員と同じボーナスを支払っていてはいずれ潰れてしまいます。ほんの少し前まではネームバリューさえあれば学生が自然と集まって学費を納めてくれていました。
今は違うと思います。
学生の母数がそもそも減少しているのです。これまでと同じ動きをしていては、積極的にPRしている大学に学生を根こそぎ奪われてしまう時代になったのです。
ようやく一般企業と同様に、収支を意識した経営戦略が必要になったということです。
この危機的状況、危機感を認識している大学の管理職はどれだけいるのか…。甘い蜜を吸い続けていた大学職員に大きな改革が求められていると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。単純に国家公務員の給与・ボーナスが引き上げられることは、みなし公務員として勤務している大学職員にとっても嬉しいニュースだったのではないでしょうか。
ですが、喜んでばかりもいられません。今後、学生が減り続ける一方で、高い給与を維持し続けるということには限界があると考えられます。給与が上がるのであれば、収入も比例して増やさなければ経営を圧迫します。大学は今、改革と変革を求められています。
大学職員は何もしなくても学費収入が安定している
大学職員の仕事はラク
大学職員の給与は何もしなくても右肩上がり
そう考えて転職活動しようとお考えの方は今すぐ考えを改めないと、大学職員に転職したとしてもまた転職する羽目になるかもしれません。
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